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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第8回・旧山田家住宅

日本民家園にある4軒の合掌造住宅のうち、神奈川県の重要文化財に指定されている旧山田家住宅は17世紀後半から18世紀初期に建てられたとみられている。これは合掌造の中でも時代的にとても古いのだそうだ。幅9・5メートル、奥行14・5メートルで、面積約141・5平方メートル。
旧山田家住宅があった富山県五箇山の桂は、五箇山の中でも山深い集落で、五箇山より飛騨の白川郷とのつながりが深かった。建物の造りにもそれが現われているという。隣り合って建っている五箇山系の旧江向家(写真奥の建物)や旧野原家、白川郷系の旧山下家と比べてみよう。
外観は、旧山田家は旧江向家や旧野原家よりずっと簡素に見える。前者には後者のような入母屋風のひさしがないためだが、このひさしの有無がすでに白川郷系と五箇山系の違いなのだそうだ。中に入ってみると、土間が非常に狭いのも白川郷系の特徴だ。「土地が狭く農作業をほとんどしないので土間が必要ないんです。同じような例は四国の山間地などにも見られます」(同園職員・安田徹也さん)。土間のかわりにほかの板の間から一段低くなったウスナワという板の間があり、台所兼作業場になっていた。また入口のすぐ横の階段がある部分は、分かりにくいが「シャシ」と呼ばれる小部屋になっている。これも白川郷系の特徴で、五箇山系では板の間の隅の方に階段があるのが普通なのだそうだ。
このように五箇山にありながら白川郷の影響を強く受けていた旧山田家だが、五箇山、白川郷を問わず合掌造民家に共通するものもある。そのひとつが立派な仏壇だ。北陸一帯は室町時代に浄土真宗中興の祖である蓮如上人が盛んに布教活動を行ったため、浄土真宗の信仰が盛んな土地だ。「ほかの宗派の仏壇が位牌を置く場所なのに対し、浄土真宗の仏壇は阿弥陀様を祭る場所。意味合いが全然違うんです」と安田さん。「だから仏壇は家の中でも最も格の高い場所に置かれ、とても大きくて立派になります」。
ちなみに仏壇を置く仏間は時代が下るにつれ大きくなっていく傾向があり、民家園では年代順に旧山田家、旧江向家、旧野原家と見ていくとそれを確認できる。こうして地域や時代による違いを比較できる点に、民家園のよさがある。

(「くらしの窓」2007年3月11日号掲載)

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