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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第2回・旧鈴木家住宅

江戸時代の五街道の一つ、奥州街道。江戸板橋から青森県は津軽半島の北端、三厩(現外ケ浜町)までを結んだみちのくの幹線道路だ。
今回紹介する旧鈴木家は、現在の福島県福島市、奥州街道の宿場町である八丁目宿にあった宿場を移築したもので、神奈川県指定重要文化財。間口は約11メートル、奥行きは約17メートル。平面積は48坪(約160平方メートル)だ。民家園主査の外山明男さんに案内してもらった。
現在の青森県東部から岩手県にかけての南部地方は古くから「南部駒」と呼ばれる馬の産地として知られている。旧鈴木家は農業のかたわら、南部駒を白河方面の競りに出す馬商人や馬を世話する馬方を泊める馬宿を営んでいた。明治のはじめのころは、普通の旅人は泊めなかったという。屋号を「赤浦屋」といい、今も「馬宿赤浦屋」という看板が残っている。民家園に移築された建物は19世紀の初めころに建てられたものと考えられているが、正確な建設年代はよく分かっていない。
玄関から中に入ると、まず現在のフロントに当たる「ミセ」があり、奥までずっと広い土間が続いている。「人と同じ入口から宿の中にまで馬を入れ、奥の土間に繋いでおいたのです」(外山さん)。馬用の小屋を建てるのではなく、宿屋の中に馬も泊めてしまうのである。土間全体を「ニワ」といい、その中で馬を繋ぐ場所は「マヤ」といった。ここには12頭の馬を繋ぐことが出来た。
ニワの一角はかまどがある台所になっており、マヤとの間には仕切りも何もない。囲炉裏のある板敷きの「カッテ」も鈴木家の家人の生活の場である「チャノマ」も、マヤに面して作られている。鈴木家の人々は、朝起きて障子を開ければそこに馬がいるという、文字通り馬と密着した生活をしていた訳だ。
宿泊客の部屋はニワから離れていて、「ツギノマ」と道路に面した「ジョウダン」に分かれている。ここには馬商人や武士が泊まり、馬方は中二階の部屋で寝た。
「町屋造りの建物は、間口が狭く奥行きが長いのが一般的な特徴です。そのため、戸袋の分だけ余計に場所を取る引き戸は、通りに面した窓や入口には使えません。限られたスペースを有効に使いながら窓や戸を開けなければなりませんでした」。旧鈴木家では、入口の戸は開閉式のドア、窓は「揚戸」といってシャッターのように上に引き上げる形式になっている。日本家屋としてはちょっと珍しい形式だ。
旧鈴木家住宅があった八丁目宿は、北から馬を連れて白河方面に向かう最後の宿であったと言われている。しかし、明治時代に東北本線が開通すると最寄りの駅から距離が離れてしまい、福島や二本松といったほかの宿場町のようには発展しなかった。旧鈴木家住宅は、馬宿として最もよく使われたころの面影を残す形で復元され、往時の宿場町の賑わいをしのばせている。

(「くらしの窓」2006年7月9日号掲載)

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