川崎市麻生区の地域情報紙「メディ・あさお」です
地元の情報をきめ細やかにお伝えします

「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第13回・旧広瀬家住宅

今回紹介する旧広瀬家は甲府盆地に位置する山梨県甲州市にあった民家。17世紀後半に建てられたと見られ、神奈川県の重要文化財に指定されている。移築前には相当改造が加えられており、建築当初からの建材が少なかったことなどから、国の重文指定を受けられなかったのだという。幅約8・9メートル、奥行約14・5メートル、平面積約119平方メートル。
旧広瀬家の特徴は切妻造の屋根にある。別に珍しくはないと思うかもしれない。確かに板葺きや瓦葺きや現在の民家なら、切妻造はごく普通の造りだ。だが茅葺き屋根の古民家はほとんどが寄棟造で造られていて、切妻屋根はとても珍しいのだ。技術的に茅葺き屋根の場合、切妻造の方が寄棟造よりずっと面倒で難しく、甲府盆地ではこうした切妻屋根の民家は「甲州民家」と呼ばれていた。ほかに切妻屋根の古民家は、日本全国を探しても合掌造や、奈良県の「大和棟」という造りの民家くらいしかないという。
なぜ甲府盆地に面倒な切妻造の屋根が発展したのか。「以前には有力な仮説があったんです」と同園職員の安田徹也さん。安田さんによれば、甲州民家の切妻屋根はかつて、白川郷や五箇山の合掌造などのように、養蚕のために造られた形式だろうと思われていた。だが、実際には養蚕が始まるよりも前から切妻屋根の民家があることが分かり、「養蚕説」は否定された。「それが分かったのが、この広瀬家なんです」と安田さん。この家を移築するために解体して調べているうちに判明したのだという。ただそのために、何のための切妻屋根かは謎になってしまった。
外見的な特徴をもう一つ言えば、玄関側の軒が非常に低いことが上げられる。これは玄関側に八ケ岳が立っていて、そこから吹き下ろす「八ケ岳おろし」を防ぐためだったという。
中に入ると、展示用の電気がついているとは言え、ずいぶん薄暗く感じる。窓がないのだ。電気がなければほとんど真っ暗だろう。ところどころに小さな窓があるが、これは「いくらなんでも暗すぎるので、この辺にこういうのがあったんじゃないかと想像して」(安田さん)民家園で開けたものだという。
もう一つ顕著な特徴は、ほかの民家では板の間だった部分が土間にワラを敷いて上にゴザをかぶせただけになっている点だ。このような形式は土座といい、甲府盆地の民家の特徴だった。
なぜ板の間にしなかったのか。貧しいから?「いえいえ、広瀬家は当時としては立派な豪邸だったはず。土座が普及したのは温かいからだと思われます」(安田さん)。確かに足を踏み入れると下のワラがふかふかして温かそうだ。ただし、ワラやゴザの中に囲炉裏があったため、火の扱いには神経を使っただろう。ノミが多いというデメリットもあった。対策は1年に1度ワラを取り換えることだったというが、あまり効果はなかったかもしれない。

(「くらしの窓」2008年1月1日号掲載)

「メディ・あさお」とは

川崎市麻生区で月1回発行している地域情報紙です。
タブロイド版全8ページ、発行部数は約7万部。
麻生区内(岡上をのぞく)の各家庭に手配りでお届けています。

お問い合わせ先

地域情報のご提供、広告掲載・印刷物・折込のお申し込みなど、お気軽にお問い合わせください。
【会社名】株式会社メディスタくらしの窓新聞社
【所在地】〒215-0026 神奈川県川崎市麻生区古沢191
※小田急線新百合ケ丘駅より徒歩約12分。「麻生郵便局」の斜め向かい、朝日新聞販売店の2階です※
【電話番号】044-951-2001
【FAX番号】044-951-2212
【メールアドレス】mado@madonews.co.jp
【ホームページ】https://www.madonews.co.jp
【定休日】土日曜・祝日・年末年始

メディ・あさお最新号

メディ・あさお最新号
※表紙のみご覧いただけます

サイト内検索

お問い合わせ先

株式会社
メディスタくらしの窓新聞社

〒215-0026
川崎市麻生区古沢191
電話:044-951-2001
FAX:044-951-2212
mado@madonews.co.jp

↑ PAGE TOP