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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第10回・旧山下家住宅

古民家は文化財といっても、もともと「生活の場」として人が住んでいたものだ。時代が経つにつれどんどん手が加えられ、時には建て替えられて永久に失われてしまう。日本民家園の役割はそうした古民家を古い姿のままで保存することにあるが、今回紹介する旧山下家は少し事情が違う。幅10・9メートル、奥行き18・2メートル、平面積201・6平方メートル。神奈川県指定重要文化財。4軒ある合掌造の中で、唯一白川郷系の住宅だ。
旧山下家は1958年に川崎市の仙台屋という会社が買い取って川崎区に移築し、料亭として使っていた。しかし数年後、火災を起こして一部を延焼してしまう(その時の焼けこげた跡が現在も残っている)。その後営業は再開されたが仙台屋の社長千葉健三氏はこの建物を手放すことにし、同園に打診してきた。
合掌造とはいっても料亭になっていたものを復元できるのか。調べてみると、間取りなどの内部構造にはあまり手が加えられていないことが判明。建材も礎石に至るまで白川郷から運んでおり、厨房や厠は建物を改造せずに外部に作られていた。「もともとの建物の構造を活かして残した千葉氏は、大変な見識があった方だったのでしょう」(同園職員安田徹也さん)。これなら大丈夫ということになり、1970年に同園に移築されてきた。
とはいえ、同園でも1階はそば屋として使われ2階は展示室になっているのだから、完全にかつての姿を保存できている訳ではない。いくつか本来の姿と異なる点を教えてもらった。まず入口の場所。白川郷系の合掌造は平(屋根の面に対して平行な壁面を平、垂直な壁面を妻という)に入口がある「平入り」だが、旧山下家は「妻入り」になっている。これは計画にない移築だったため十分な敷地を確保できなかったからだという。また入口の上にひさしがついているが、白川郷系では普通このようなひさしはつかない。中に入ると2階に続く階段があるが、これも後から作ったもので、本来のシャシと呼ばれる階段室は取り払われている。窓のガラスも、もちろん建築当時(19世紀前半)にはなかったものだ。
合掌造りは、巨大な屋根の葺き替えも大仕事なことで知られている。同園では五箇山の旧江向家の移築の際、伊勢原市の屋根葺き職人が五箇山まで行って現地の方法を教えてもらい、屋根を葺いていた。旧山下家でも同じ職人に屋根を葺いてもらっていたが、実は同じ合掌造りでも五箇山と白川郷では屋根の葺き方が違っているのだそうだ。現在では旧山下家の屋根は白川郷のやり方で葺いてあり、比べてみると五箇山とは確かに模様の付け方などが違うことが分かる。
住宅の中にあがると、土間の部分が台所になり、寝室に当たるチョウダという部屋のあった場所がそばの製粉室になっている。囲炉裏のある板の間オオエ、座敷スエノデイ、ヒカエノデイの計3部屋は障子を取り外し、客用のテーブルが並んでいる。このように旧山下家はさまざまな改造が施され、決して古い姿のまま保存されている訳ではない。しかし見方を変えれば、古民家が時代とともにどのように改造されていくかを見ることが出来る建物とも言える。

(「くらしの窓」2007年5月13日号掲載)

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