川崎市麻生区の地域情報紙「メディ・あさお」です
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メディ・あさお205号(2018年12月25日発行)

【あさおヒューマン】川崎フロンターレ社長・藁科義弘さん

Jリーグ2連覇を成し遂げた川崎フロンターレ。市民クラブ化を推進してきた歴史があるので、富士通のグループ会社であることを知らない人も、今では多いかもしれません。連覇のタイミングに合わせて、社長の藁科義弘さんを訪ねました。
1957年生まれの藁科さんは、サッカー王国・静岡県の出身。青春時代はテニスに打ち込み、「高校時代には静岡代表でインターハイや国体にも出場しました」というスポーツマン。大学をへて富士通に入社し、本社に10年以上勤務した後、初めての転勤で青森県に赴任したことが「今につながる原点」になりました。 「初めて地域との関わりを持ったことで、公私ともに人生観が変わって、もう東京に帰りたくないと思ったんです」。
しかし、サラリーマンですからそうもいきません。その後も本社やグループ企業などの転勤を繰り返して全国各地を回り、途中からご家族は大阪にとどまって、ご自身は今も単身赴任生活を続けています。
そして2015年4月、フロンターレの社長を拝命した藁科さん。「フロンターレはグループの中でもすごく特殊な会社だから、嫌なら断ってもいい」と言われましたが、「静岡出身ですからやっぱりサッカーは大好きですし、フロンターレのことは前身である富士通サッカー部の時代から応援していましたから」と、あまり悩まずに決断したそうです。
個々のサポーターと直に接するような業務は、それまでの職場に比べると確かに「特殊」。しかし、藁科さんは「人と接するのは好きなので、大変と思ったことはないです」とすぐにフロンターレにとけ込んで行きました。
シーズン途中からの赴任となったため、2015年はクラブとチームをよく知ることに専念。そして2016年、藁科さんは社員たちを前に「3年かけて優勝する」と宣言、さらに「うちにフィットする選手は『赤字になるかも』などと弱気にならずに獲りにいけ」と檄を飛ばしました。
「フロンターレはそれまで一貫して黒字経営だったんですが、何としても優勝を目指すんだという決意を『赤字』という表現で社員たちに示したんです」。
その結果は、皆さんご存じのとおり。結果論とはいえ、赤字にも一度もなりませんでした。
すでに来シーズンに向けて動き出しているフロンターレですが、藁科さんは「調子のいいときはどこも同じようなもの。負け出したときにどうなるのか。今の状態が会社のすべてだとは思っていません」と冷静です。一方で「うちはエンターテインメント性の高いクラブなので、社員たちには『企画を立てるなら、自分たちも楽しめる企画にしろよ』といつも言うんです。社員が楽しんでいると、サポーターに伝わりますから」と、フロンターレの社長らしい(?)言葉も。「私もフロンターレに来て、初めて『仕事の楽しさ』を知りましたよ」といたずらっぽい笑顔を見せていました。

(2018年12月25日号掲載)

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