川崎市麻生区の地域情報紙「メディ・あさお」です
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メディ・あさお204号(2018年11月25日発行)

【あさおヒューマン】万福寺ニンジン生産者・鈴木章夫さん

かつて麻生区の名産として知られていた万福寺鮮紅大長人参(以下、万福寺ニンジン)。現在も万福寺ニンジンを栽培している数少ない農家の一人、鈴木章夫さんを、古沢の畑に訪ねました。
代々続く農家の長男として1963(昭和38)年に生まれた鈴木さん。「古沢は市街化調整区域なので開発はあまり進まなかった」といいますが、周囲がどんどん開発されていく時代に成長してきました。 「昔は今の警察署の辺りは田んぼでした。多摩線が開通したのは小学生のころです」「学校は柿生小学校と柿生中学校に古沢からバス通学でした。今では区内にたくさん学校ができていますけど、昔は学校の数自体が少なかったですから」という言葉からは、麻生区の移り変わりが感じられます。
若いころは農家を継ぐということはあまり意識せずに育ち、高校卒業後は電機メーカーに就職。30年以上サラリーマン生活を続けてきた鈴木さんですが、6年前に退職して農家を継ぐ決心をしました。
決断の理由のひとつには、農業を続けていたお父様が80歳を超えていたことがありました。「定年まで会社勤めをしていたら、父から教わることができなくなる。父が動けるうちにいろいろ習っておこうと思ったんです」。
農家に転身といっても、鈴木さんは就職してからも休みの日などには畑の手伝いをしていたため、農作業自体にはさほど苦労しなかったとか。しかし「手伝っていたときは言われたことをやるだけでしたが、自分が農家になったらどこに何を作るか、作付けはいつにするか、自分で決めなければいけない。これが大変です」。
万福寺ニンジンの栽培を始めたのは、実は昨年から。「昔は古沢の辺りでもよく作られていました。うちの家でも作っていたようですね」といいますから、鈴木家としては万福寺ニンジンの栽培を「復活」させたことになります。
「けれど、去年は種を深く植えて土をかぶせすぎたので、あまりいい出来にならなかったんです。だから、去年は品評会にも参加しなかったんですよ」と苦笑いする鈴木さん。ことしは順調に育っているようで、「ほら、ここからここまで万福寺ニンジンです」と畑を指差して教えてくれました。
「麻生区にはもう土地がないから、農業に新規参入というのは難しい。自分たちのような代々の農家の跡取りが頑張っていかないと」と語る鈴木さん。現在では、麻生区役所前や五月台駅前などにある直売所にダイコン、ジャガイモ、ナス、ゴボウ、冬物のナノハナなどを出荷しており、「1品目に偏るのではなく、いろいろなものを作って、年間を通じてコンスタントに出荷できるようにしたい」と目標を語ります。これからの季節、運が良ければ、鈴木さんが作った万福寺ニンジンが直売所に並んでいるかもしれませんよ。

(2018年11月25日号掲載)

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