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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第3回・旧井岡家住宅

日本民家園は主に東日本の古民家を保存している。その中にあって、今回紹介する旧井岡家は現在の奈良県奈良市、柳生街道に面して建っていた、同園では唯一の西日本の民家だ。間口約8メートル、奥行き約13メートルで、平面積は約103平方メートル。神奈川県指定重要文化財。今回も、民家園主査の外山明男さんに案内してもらった。
古都奈良といえば、さぞかし古い建物が多く残っているだろうと思われるかもしれない。だが実際には、江戸時代に何度も大火に見舞われたため、古い建物というのはほとんど残っていないのだそうだ。1960年代に行なわれた調査では、確実に17世紀のものとわかる建物は1軒もなく、あるいは17世紀のものかもしれないと推定されるものも町家では4軒しかなかったという。旧井岡家は、その最古の4軒のうちのひとつ。17〜18世紀の変わり目ごろに建てられたと見られている。
井岡家では代々「与兵衛」を名乗り、当初は油屋を営んでいたが、線香屋から養子を迎えた際に線香屋にくら替えし、現在も線香屋の屋号で通っているという。旧井岡家住宅には玄関先に「油」の看板がかかっている程度で商売の内容を感じさせるものは特にないが、しかし商家としての特徴はちゃんと備わっている。
入口の戸は引き戸を使わず、上に大きくはね上げるようになっているが、これは旧鈴木家同様、間口の狭い町屋で限られたスペースを有効に使うための工夫だ。入口は家の真ん中にあるので、中に入ると両側にミセ、シモミセという商売用の部屋がある。
シモミセは小売りをする場所で、外には商品陳列棚のアゲミセが突き出ている。「これは使わない時にははね上げて折り畳めるように作ってあります。縁側と間違えて座っちゃ駄目ですよ」と外山さん。ゴールデンウイークなどは、ここでお菓子を売ったりもするそうだ。反対側のミセは、通りとの間が太い木の格子で隔てられていた。この太い格子は「鹿格子」と呼ばれたという。いかにも奈良らしい。
さらに中に入っていくと、かまどのある土間が広がり、左手には井岡家の人々が暮らしたダイドコロと接客用のザシキがある。
鴨居の溝に注目するように、と外山さん。「溝が途中までしか掘っていないのが分かりますか。突き止めという方式で、古い建築技法の形式を示しています」。カンナを使うようになるまでは、溝は手で掘っていた。当然、非常に手間がかかる。そのため、端から端まで溝を掘るのではなく必要な部分だけ掘って後はそのまま残したのである。また、入口付近にあるツシと呼ばれる中二階は屋根との間が非常に低く、窓もない。中二階と天井裏のような感じでとても居住空間としては使えず物置として使われたが、これも建築的に古い形式なのだという。

(「くらしの窓」2006年7月30日号掲載)

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