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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第25回・旧工藤家住宅

日本の古民家の建築様式で、もっとも良く知られているのは世界遺産にもなった合掌造りだろう。ではそのほかの様式はと問われると、ほとんどの人が「はて?」と首をひねるのでは。そんな中、今回紹介する旧工藤家住宅の「南部曲り家」という建築様式は比較的知名度が高い建築様式かもしれない。岩手県の紫波町から移築されたもので、18世紀中ごろの建築と見られ、幅19・2メートル、奥行き11・1メートルの母屋に幅7・6メートル、奥行き6・3メートルの厩が付属している。平面積256・9平方メートル。国指定重要文化財。日本民家園の中でも最大級の古民家だ。
曲り家とは、人が住む母屋と馬を飼う厩をL字型になるようにくっつけて建てたもので、その名の通り、家が途中で折れ曲がっているように見える。「南部」とは江戸時代の南部藩のことで、曲り家は南部藩の支配地だった岩手県の中北部に主に見られる様式だ。もともと母屋と厩は別々に建っていたのが、やがて母屋を増築して厩をくっつけるようになっていった。旧工藤家は、増築ではなく最初から母屋と厩を一体化させた曲り家として建てられたもので、このような形で建てられたものとしてはほぼ現存最古だという。「はじめは増築の結果だった曲り家が最初からそのように建てられたということは、そのころにはそれだけ曲り家が一般的で当たり前のものになっていたということです」と、同園職員の安田徹也さん。
なぜ母屋と厩が一体化したのか。それは、冬の寒さが原因だろうといわれている。この辺りは豪雪地帯ではないが冬はひどく冷え込む。そして馬産地である南部の農民たちにとって馬は家族も同然の存在だ。厩と家を一体化すれば管理もしやすいし、囲炉裏の火で馬に寒い思いをさせずにもすむ、という発想だったらしい。衛生的には問題があるので昭和初期には専門家から母屋と厩を別々にするよう指導が入ったが、そのときも住民たちからは反発の声が上がったという。
中に入ってみると大きな家だけあって広々としていて部屋数も多い。と同時に、天井がなく、大きな屋根裏を見ることが出来る。「古い農家では竹すのこをしいて天井を作り、屋根裏を物置などに利用することがあります。しかし寒冷地では竹があまり大きく育たないので、天井裏を利用しないことが多いのです」(安田さん)。さらに鴨居の上の部分は柱を組んであるだけで、板の仕切りもなく吹き抜けになっている。これでは防寒の役をまったく果たさないのではないかと思えるし、実際、工藤家の人々は寒くて仕方がなかったと語っているそうだ。だが一方で、囲炉裏で火を強く炊けばその熱を建物全体に行き渡らせることが出来るという効果があり、やはりそれなりに理由があってこうした造りになっていたのだろう。

(「くらしの窓」2010年8月1日号掲載)

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