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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第23回・旧岩澤家住宅

旧岩澤家住宅があった神奈川県愛甲郡清川村は、県の西部、丹沢山地に抱かれ、村内には宮ケ瀬ダムがある山間の村だ。岩澤家は煤ケ谷と呼ばれる地区の名主を務めたこともある農家で、旧住宅は民家園の中では比較的新しく、1989年に移築された。幅7・3メートル、奥行き14・5メートル、神奈川県指定重要文化財。推定建築年代は17世紀末期で、移築の時期は新しくとも、神奈川県内でも有数の古さを持つ古民家といえる。
旧岩澤家のあるエリア「神奈川の村」には他の古民家が密集して建ち並んでいる。実際の農村では庭や田畑がありもっと家々の距離は離れていたのだろうが、現代人の目からすると同園の中でももっとも農村らしい雰囲気のある一角に見える。その中にあって、山間部の村の古民家である旧岩澤家には、それに伴う地域的、あるいは時代的な特徴などはあるのだろうか。「清川村は9割以上が山林ですので、木材が豊富です。そこで木材を多く使っているところに、山間部ならではの特徴があると思います」と語るのは、同園職員の安田徹也さん。
一番分かりやすいのは、外見だ。土間の入口の左側、囲炉裏があるザシキの外壁が板壁で作られている。「板の間の部分を開放しないで壁で覆ってしまうような閉鎖的な造りは、時代の古い民家に共通してみられる時代的な特徴です。それを板壁でやるところが山間部らしいと言えます」。確かに、同じ閉鎖的な造りでも登戸にあった旧清宮家は土壁でザシキ部分を覆っている。また、家の全面にわたって鴨居から上の外壁部分が板で作られているが、これは機能としては板壁にする意味は特にないのだそうで、山間部ならではのちょっとしたおしゃれと言える。

一方、入口の右側の外壁も白い板壁のように見えるが、こちらは土壁を板状に切った竹で囲ったものだ。土壁よりも高価で高級な板壁が使われているのはザシキと来客用の畳の間であるデイの周囲だけで、各部屋の格式によって使い分けがされていることがうかがわれる。デイの入口はザシキの外壁から少し奥まって作られているが、これは奥多摩地方の様式の影響を受けたものだという。
中に入ってみると、ザシキが板敷きになっている。古い時代の民家といえば竹すのこを使うのが一般的だったが、木材を豊富に使えた旧岩澤家では板敷きの部屋だったと考えられているのだ。ここにも山間部の地域性を見ることが出来る。
ところで、ザシキに使われている板は、カンナより前の時代に使われていたチョウナ削りの跡が見られる。だが、「さすが古い時代の古民家だけあってカンナではなくチョウナを使っているのだな」などと感心してはいけない。きれいな削り跡にほれぼれと見入っていたら、安田さんに「それは移築の際に新しく作ったもので、当時の部材を使っている訳ではありませんよ」と笑われてしまった。

(「くらしの窓」2010年5月9日号掲載)

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