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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第17回・旧清宮家住宅(2)

多摩区登戸から移築された旧清宮家が建てられたのは300〜350年前。神奈川県内の古民家では、横浜市にある旧関家住宅に次いで2番目に古いと考えられているという。前回は移築の経緯などを紹介したが、今回は建物そのものを見ていこう。
家の外観的特徴の一つに、家の柱を礎石の上に立てる「石場建て」の方法がとられていることがあげられる。当時は家の柱を立てるには穴を掘ってそこに差し込む「掘っ立て」が主流であり、石場建ては相当珍しかったらしい。近所の住人たちが「風が吹いたら家ごと吹き飛ばされるんじゃないのか」と弁当を持って見物に来たという話が伝わっているほどだ。「でも、掘っ立て柱は腐りやすく、同園の古民家にも掘っ立てのものは1棟もありません。石場建てだから、何百年も残ったのだといえます」(同園職員・安田徹也さん)。
もうひとつ、顕著な外観的特徴は茅葺き屋根の上部にある「芝棟」だ。屋根の頂上に土で重しをし、その土が崩れないようにアヤメなどの多年草を植える。季節によっては、屋根の上に花が咲き乱れることになる。現代の感覚からはおかしく感じるが、東日本ではそれほど珍しいものではないのだという。
土間に入ると薄暗い中に曲がった大きな梁が目につく。板の間の梁も1本の木を半分に割って作ってるなど、家のデザインは梁に力点が置かれているのが分かる。
また、建築年代が古いゆえの特徴というものもいくつか見られる。たとえばカンナが普及する前の古い大工道具であるチョウナの削り跡が残っていることなどはそのひとつだ。また窓が少なく壁が多く、非常に閉鎖的な作りになっていることも、古い民家の特徴なのだという。出入り口も一つあるだけで、土間には流しや勝手口すらない。これは家のすぐ前に小川が流れていたからと言うが、それにしても極端だ。
閉鎖的といえば、土間と板の間の間が格子窓の仕切りで区切られているのも古い年代の特徴なのだという。同じような仕切りは旧伊藤家にもあるが、旧清宮家の方がより閉鎖性が高く、それだけ古い年代だということを示している。
日本の建築には「建物は夏を旨とせよ」という言葉がある。日本の夏は蒸し暑くて不快だから、建物は夏を基準にして建てた方がいいというのだ。だが、この旧清宮家は閉鎖的な造りのため通気性も悪く、熱もこもりやすい。夏の間は中でじっとしているだけでも汗がにじんでくるほどで、明らかに冬を念頭に建てられている。どうしてこういう造りになっているのかは諸説あってよく分からないそうだが、「夏を旨とせよ」という考えとは別の考えの建築法があったことは確かだ。実際、同園の古民家の囲炉裏に火を入れ、床上公開を行っている炉端の会のメンバーからは、夏に旧清宮家の担当になると苦情が寄せられることもあると言う。
同園に移築されてきた当初、旧清宮家住宅の前には小さな水田が設けられていた。この水田までを含めてかつての農家の様子を再現していたのだが、後に旧菅原家住宅が移築される際にどうしても場所がなかったため、水田をつぶして移築することになった。水田はなくなってしまったが、現在は旧清宮家わきに納屋を再現した農具展示室と2003年に宮前区野川から移築された便所があり、かつての農家の雰囲気を残している。

(「くらしの窓」2008年11月9日号掲載)

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