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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第16回・旧清宮家住宅(1)

日本民家園には、川崎市内にあった古民家も何棟か移築されている。正門から入って最初に見える旧原家住宅に続き、2棟目が今回紹介する旧清宮家住宅だ。民家園開園のきっかけが現麻生区金程にあった旧伊藤家住宅(旧清宮家の次に紹介)だったことはよく知られているが、この旧清宮家も同園の歴史を語る上で外すことのできない存在だ。
旧清宮家住宅は、もともとは多摩区登戸の現在のダイエーの裏手を少し入ったあたり、同園からは歩いて10分も離れていない場所に建っていた正真正銘の地元の古民家。幅13・6メートル、奥行き8・2メートル、平面積約102平方メートル。神奈川県指定重要文化財。17世紀後半、今から300〜350年ほど前の建物と見られている。同時代の神奈川県内のある村の記録では、59軒の家のうち清宮家と同規模あるいはそれ以上の大きさの家は13軒だったという。清宮家も、おそらく登戸村でも大きい方の家だったのだろう。元の所有者だった清宮家は今でも同じ場所で建築会社を営んでおり、同園の古民家の屋根の葺き替えや修復などの際には作業を請け負うこともある。
話は1951年にさかのぼる。大正大学教授を経て川崎市教育委員会嘱託となっていた古江亮仁さんは、市内外の古民家や建築物を集めた野外博物館を作りたいと考えていた。そんな折、登戸に清宮家という「チョウナ削り」の民家があると教えてくれる人がいた。材木を削る道具としてカンナが普及する前に使われていた「チョウナ」は、ひらがなの「し」の形の枝の先に鍬のような刃がついた道具で、うろこのような削り跡の模様が出来る。この削り跡があるということは、カンナが普及する前の古い建物だということだ。
古江さんが訪れると、確かに古い建物であることは明らかだった。同時に古江さんは、旧清宮家最大の特徴ともいえる土間の大きく曲がりくねった梁に目を奪われた。「初めてこの家を訪れた時はちょうど小雨が降り出していたので土間の中はとても暗く、すみにあるカマドの中でメラメラと燃える火に(中略)照らし出され、まるで動くように見え、子供の時みた絵本のヤマタノオロチの図を思い出した」(『日本民家園物語』)。しかし当時清宮家では家を建て替える予定もなく、古江さんも改築の際には連絡をしてほしいと伝えただけだった。
そして1965年、日本民家園の開園に向けて奔走している古江さんのもとに、清宮家から「家を建て替えたい」という連絡が入る。清宮家の人々は、15年も前の約束をちゃんと覚えていたのだ。清宮家はもともと農家だったが、明治時代になって大工に転職した。ところが農家として建てられた民家は大工仕事には不向きで生活の上でも不便になってきたため建て替えることにしたのだった。
これを機に古江さんは民家園への移築を申し入れ、研究者による調査も行われた。建築年代については後の改造が激しかったため様々な見解があったが、旧伊藤家を最初に学問的な研究対象とした関口欣也さん(現横浜国立大学名誉教授)は住宅の中に入るなり「これは旧伊藤家より古い住宅だと一目でわかった」という。今では関口さんの説が認められ、旧伊藤家より20〜30年は古い年代のものだと考えられている。
ともあれ、旧清宮家は旧伊藤家住宅に続く2軒目の古民家として移築された。地域も年代も近い古民家が一カ所に移築されたことで比較研究が可能になり、2つの古民家の価値はより大きなものになった。

(「くらしの窓」2008年9月14日号掲載)

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