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「くらしの窓」連載【日本民家園を行く】

【日本民家園を行く】第12回・沖永良部の高倉

日本民家園は枡形山の中腹にある。旧作田家を過ぎると次の家である旧太田家までは少しばかり木々に囲まれた山道の中を歩かねばならないが、その途中にぬっと姿を現すのが今回紹介する沖永良部の高倉だ。19世紀後半に建てられたと見られ、川崎市重要歴史記念物。幅2・7メートル、奥行2・5メートル、平面積約6・6平方メートル。床の高さは2・4メートルになる。
「オキノエラブってどこ?」と思った方は地図でご確認を。奄美諸島のひとつで奄美大島よりさらに南、鹿児島県の南端に位置する島だ。ここからさらに南に行けば沖縄本島になる。
川崎市民には沖縄出身者が多い。そこで民家園にも沖縄の物件を移築したいという話があったが、同園が開園した当時、沖縄はまだアメリカ統治下にあり、沖縄から本土に物件を持ってくることはできなかった。ならば沖縄に一番近い所から、ということでこの倉が沖永良部から移築されてくることになったらしい。4本足の倉は大きさとしては標準サイズで、現地では6本足、9本足の倉もあるという。
それにしても屋根から足だけがニョッキリ伸びているようなスタイルは、本土の人間から見ると何とも特異だ。キノコか、はたまたUFOかといった感じもする。奄美から沖縄に至るこの一帯の文化には共通点が多く、こうした高倉もそうした点の一つ。湿気やネズミ対策として高床式の倉庫がつくられるようになった。「でも沖縄と奄美では少し差異があります。沖縄では壁があったり、もう少し家らしい形をしていて、こんな風に屋根から直接足が伸びているようなのは奄美の特徴です」(同園職員安田徹也さん)。
高倉の周りには南国ムードを演出するためにいくつか工夫がしてある。まず倉を取り囲む石垣。沖縄や南方では家をこうした石垣で囲っていることが多い。「といっても家の敷地全体を囲むのであって倉だけを囲む訳ではないし、実際の石垣はもっと背が高いんですが」。本来はサンゴ礁の石を使う所を普通の石で作ってあるのもご愛嬌だが、あくまでイメージなのでやむを得まい。
もう一つは倉の手前の辻の石垣に埋め込んである石敢当。沖縄から九州南部に広く見られ、イシガントウともセキガントウ、セッカントウとも言われるが同園ではイシガントウと呼んでいる。ただ「石敢当」と文字が彫り込まれただけの石だが、交差点や辻に作られる魔よけなのだという。本土の道祖神やお地蔵さんのようなものだと考えれば分かりやすいかもしれない。
まわりにソテツなど南国の植物が植えられているのも演出のひとつ。植物といえば、この高倉はイジュという南方特有の木材を使っている。イジュには毒性があり、おかげでシロアリやネズミに食い荒らされることがないのだとか。またほかにも「本土の職人には何だかよく分からない木」も部材として使われているそうだ。
高床式の倉だから、残念ながら中を見ることはできない。倉に入るためのはしごもあるのだが、現在はいたずらをされないように取り外してある。文化財となった今ではネズミよりもマナーの悪い人間の方が危険だということか。

(「くらしの窓」2007年11月11日号掲載)

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